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制御不能 ~lost control~ 3 【dog fight】

光の届くことのない薄暗いコンクリートの森の中。

唯一見える灯りといえばこの車照らすヘッドライトの灯りと遠くの方で見える偽りの日光のみである。

地図に沿って移動すること約1時間。

立体駐車場のようなものが見える。

この一帯は人が離れた世界。隔離された世界。荒れ果てたこの地にポツンと置かれた1つの灯り。その姿は彼女を照らす唯一の本物の、純粋な偽りのない光のようであった。

 

光が増える

 

身の毛がよだつ。全身の毛を逆立て彼女は振り返る。その光に思わず目が眩む。

上手く見えない。しかし、本能的に自分の身に降りかかる危機的状況を察知し、白き獣を従え逃走する姿は、さながら、狩人に狙われた猛獣のようで。

猛獣と狩人は人の手によって作られた立体駐車場という名のジャングルへ駆け込む。

 

獣に鞭を打ち走らせる。狩人はその獣を追い立てる。

 

なにがなんだかわからない。なぜ追われているのか。なぜ逃げているのか。

ただ、心を空に。体を限界まで使って逃げる。逃げる。逃げる。

だんだん目が慣れてくる。相手の形がゆっくりと、うっすらと、その灯りの影となって見え始める。

 

ーー政府の連中だ!ーー

 

これは大変なことになってしまった。彼女は何も悪いことをしていない。

しかし彼女は政府に追われてしまった。政府によって拿捕された人間のゆく末を知る人物はいない。

 

ーーなんで追われてるのかわからないけど、とにかく、逃げないと・・・・・・ーー

 

手にギュッと力がこもる。

走らせてから数100mのところである。もう追われることに慣れたのか、彼女は驚くほど冷静であった。

ジャングルに鳴り響く荒々しい獣の息吹と狩人の銃声。

幸いなことに狩人は1人しかいないようだ。

はたして、彼女はこの一騎打ちを制することができるのだろうか?

 

一瞬の瞬きも許されない。もし、瞬いてしまったら最後、狩人の罠にかかり仕留められてしまう。

瞬きをせずに視線を動かす。右へ、左へ、後ろへと。

 

ーーしまった!いない!--

 

政府の野郎が消えた。消えてしまった。追いきれないと判断した狩人は頭脳戦を仕掛けようというのである。

当然だ。碌に学校へ行ってこなかった彼女は馬鹿である。

先回りして一気に捕らえるつもりのようだ。

しかし、政府の考えた馬鹿、それは、あくまでも表面的なもの。我々凡人は、しばしば、馬鹿、いや、馬鹿故の発想に驚かされ、振り回されることがある。

 

それは、彼も例外ではない。

 

ーー獣の姿が消えたーー

 

暗く気味の悪いひび割れたコンクリートのジャングルの中、その獣は突如として姿を消した。

すぐに彼は獣の聲に囲まれる。音は大きく、小さくを繰り返す。

 

ーー獣の居場所が、つかめない! ーー

 

獣はすぐそばにいるのだが、その姿を発見することができない。

いつの間にか立場が完全に逆転する。

先ほどまで獣を追い詰めていた狩人は滑稽なまでに獣に翻弄されている。

 

ーー見失った。ーー

 

少し前までかすかに聞こえていた獣の足音も完全に消え失せた。

先回りしたにも関わらず、狩人は獣の姿を捉えることはできなかった。

 

彼女は逃げ切ったのである。その勝利を讃えるように、深い森の木漏れ日のような確かな灯が見える。

 

彼女は祝福されるように光に包まれた。

 

「うわ、眩し。」

 

それが、彼女の人生での初めての逃走。そして、闘争となったのだ。